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3. EDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications) (2)
2008年9月更新
DCCTにより、よい血糖コントロールが合併症の発症・進行の防止に役立つことが明らかになりましたが、この効果がその後も持続するかどうかを調べるために行なわれた追跡調査です。
EDICはDCCT終了後に、従来療法群だった患者さんにも強化療法を開始するよう勧めて、その後の経過を長期間にわたり観察した研究です。前回は網膜症を中心とする細小血管合併症の結果についてでしたが、今回は2005年に発表された心血管疾患についての結果について解説します
研究目的
前回ご紹介した調査により、よい血糖コントロールによる細小血管合併症の発症・進行抑制効果は長期にわたって持続することがわかりましたが、では、よい血糖コントロールの長期にわたる心血管疾患への効果はどうなのか、これについて調べました。研究の対象
DCCT終了後、従来療法群だった患者さんにも強化療法を開始するよう勧め、全員の患者さんは主治医のもとに戻りました。このうちDCCTで従来療法群だった患者さん688人と強化療法群だった患者さん687人の計1375人を対象として調査が行なわれました。研究の方法
患者さんの経過を、DCCT終了時から引き続いて長期間にわたって観察し、心血管疾患の発症につき比較しました。研究期間
1994年~。結果の概要
心血管疾患の発症は、DCCTで強化療法だった群で有意に抑制されていました。研究結果をもう少し細かくみてみましょう。 血糖コントロール
両群の治療方法の差は徐々になくなり、11年目には強化療法群だった患者さんの97%と従来療法群だった患者さんの94%が強化療法を行なっていました。DCCT開始時点での患者さんのHbA1cは両群とも約9%でしたが、DCCT期間中に強化療法群は血糖コントロールが改善し、DCCT終了時には両群のHbA1cの平均値は強化療法群で7.4%、従来療法群で9.1%でした。EDIC開始後両群の差は小さくなり、11年目には強化療法だった群で7.9%、従来療法だった群で7.8%となっていました。 EDICの11年間で平均したHbA1cは強化療法だった群で8.0%、従来療法だった群で8.2%でした。 アウトカム
主要アウトカムは初回の心血管イベント(非致死的な心筋梗塞または脳卒中、心血管疾患による死亡、狭心症)までの時間DCCTのベースラインでは当時の基準で高血圧や高脂血症の人はおらず、微量アルブミン尿の人もわずか5%でした。また従来療法群の収縮期血圧がわずかに高かった(113mmHg と 115mmHg)以外には、強化療法群と従来療法群の間で心血管疾患のリスク因子に有意な差はありませんでした。 DCCT終了時には、強化療法群と従来療法群の間で、心血管疾患のリスク因子に差ができていました。微量アルブミン尿(7%と13%)、アルブミン尿(1%と3%)は従来療法群で多くなっており、HbA1cも従来療法群の方が高値でした(7.4%と9.1%)。 EDIC 11年目では、微量アルブミン尿(9%と17%)、アルブミン尿(2%と6%)はやはり従来療法群で多く、血清クレアチニン値が2mg/dL以上の人も従来療法群で多くなっていました(0と2%)。 心血管疾患の他のリスク因子については、DCCT終了時、EDIC 11年目とも両群間でほとんど差はありませんでした。 EDIC 11年目では、両群間のHbA1cの差はわずか0.1%になっていました(7.9%と7.8%)。 平均17年の追跡期間の間に、強化療法だった群で31人の患者さんに46回の、従来療法だった群で52人の患者さんに98回のイベントが発生しました。発生率は患者さん100人年あたり、それぞれ0.38と0.80でした(p=0.007)。主要アウトカムのそれぞれのイベントでみると、有意な差ではありませんでしたが、強化療法群ではすべてのイベントで発症が低下していました(表1)。
心血管疾患の初回のイベントの累積発症率でみると、強化療法だった群では、従来療法だった群に比べて、42%の低下が認められました(p=0.02)(図1)。非致死的な心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡、の初回のイベントでみると、強化療法だった群では、従来療法だった群に比べて、これらのイベントの累積発症率は57%低下していました(p=0.02)(図2)。
前述のように、強化療法群と従来療法群ではDCCT期間中に心血管疾患の危険因子に差ができていました。この点を考慮して、DCCT期間中の心血管疾患の危険因子の時間変化の影響をみたものが表2です。 ベースラインでの因子を調整しただけ(時間依存性を無視)の場合は、強化療法群のリスクは従来療法群の0.53倍(p=0.005)でした。微量アルブミン尿、アルブミン尿は心血管疾患と有意に関連しており、時間依存性を考慮すると微量アルブミン尿、アルブミン尿のある場合はない場合に比べて心血管疾患のリスクが2.5倍以上になっていました。このため強化療法群で心血管疾患のリスクが低下した理由として、強化療法群での微量アルブミン尿、アルブミン尿の抑制が考えられましたが、これらを調整してもまだ強化療法群では有意に心血管疾患のリスクが低下しており、強化療法群でのリスク低下のうち微量アルブミン尿、アルブミン尿の抑制によるものは一部であることがわかりました。 HbA1c値も心血管疾患と有意に関連しており、時間依存性を考慮するとHbA1c値の10%の低下(例えば8.0%から7.2%)により、心血管疾患のリスクは0.8倍となり、20%の低下となっていました(p<0.001)。HbA1cの時間依存性を調整すると強化療法群と従来療法群の差は有意ではなくなり(p=0.61)、強化療法群でのリスク低下の大部分はHbA1c値の変化によるものであることがわかりました。
心血管疾患のリスクに影響することがわかっている薬剤については、EDIC 11年目で従来療法群にβ遮断薬が多かった(7%と3%)以外には両群間で有意な差はありませんでした。 強化療法群、従来療法群を問わず、心血管疾患を発症した人と、しなかった人のベースラインでの因子を比較したものが表3です。年齢、罹病期間、網膜症、喫煙、BMI、総コレステロール、LDLコレステロール、HbA1c、尿中アルブミン排泄、従来療法群への割付、が心血管疾患の発症と関連していました。
研究結果がもたらしたもの
DCCTで強化療法だった群では、その後の血糖コントロールに差がなくなっても、引き続き細小血管合併症が抑制されていました(EDIC-1参照)。今回の報告では、心血管疾患についても同様の抑制効果が持続することがわかりました。高血圧、高脂血症などのリスクのない患者さんを対象に行なわれたこともありますが、非致死的な心筋梗塞または脳卒中、心血管疾患による死亡という重篤なアウトカムのリスクが57%減少したという本研究の結果は、コレステロールや血圧を低下させた他の研究による結果を上回っています。DCCT/EDICの結果は、血糖コントロールの結果はすぐに目に見える形で明らかにはならないが、よい血糖コントロールを続けていれば次第に効果が現れ、またその結果は長く続くこと、さらに悪い血糖コントロールの結果はなかなか改善しないこと、を示しています。なるべく早くよい血糖コントロールを達成し、維持することが重要です。
Nathan DM, Cleary PA, Backlund JY, Genuth SM, Lachin JM, Orchard TJ, Raskin P, Zinman B; Diabetes Control and Complications Trial/Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications (DCCT/EDIC) Study Research Group.
Intensive diabetes treatment and cardiovascular disease in patients with type 1 diabetes.
The New England Journal of Medicine. 2005;353:2643-53. Abstract(PubMed)
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